オープンソースライセンスで頒布されるAIモデルが増えてきてはいるが、トレーニングデータを含めた全ての関連コンポーネントがオープンであるAIシステムには幾つかの有望なシステムが生まれているものの未だ発展途上にあると言える。そのような中で、今年5月にLinux FoundationがAmazon、Meta、IBM、Microsoft等の企業と協力し、Open Model Definition & Weights License v1.0(OpenMDW-1.0)というAIシステムに関わるコンポーネントを包括的に扱ってオープンに利用許諾を付与するライセンスを公開した。本稿では、そのOpenMDW-1.0のオープンソース性、他のライセンスとの比較、法的に不明瞭な点やAI領域における議論が必要な点等の提起を行う。
English version: https://shujisado.org/2025/07/14/openmdw-license-review/
オープンソースと呼べるライセンスであるか?
OpenMDWは、従来のソフトウェア中心のライセンスでは明示的に射程となっていなかったAIモデル、データ、重み(パラメータ)といったAI関連コンポーネントを包括的に扱うライセンスであり、全体的にはMITライセンスやApache-2.0と類似する部分の多い寛容なライセンスと言える。「オープンソースの定義」の10ヶ条へ適合してオープンソースと呼べるライセンスであるかという点に関しては、再頒布の自由、ソースコードの公開、派生物作成の自由といった基本的な原則をクリアし、また人や用途等における制限はなく、特定技術を排他する条項もないと評価できることから、オープンソースのライセンスとして承認される可能性は高いだろう。(なお、2025年7月13日時点でOpenMDWはOpen Source Initiative(OSI)のライセンス承認プロセスには提出されていない。)
Subject to your compliance with this agreement, permission is hereby granted, free of charge, to deal in the Model Materials without restriction, including under all copyright, patent, database, and trade secret rights included or embodied therein.
あなたが本契約を遵守することを条件として、モデルマテリアルに含まれる、またはその中に具現化された全ての著作権、特許権、データベース権、及び営業秘密の権利を含め、いかなる制限もなくモデルマテリアルを無償で取り扱う権限をここに許諾します。
肝心の権利許諾に関しては、上記のように規定されている。この条文の構造はMITライセンスの権利許諾の条文と非常によく似ているが、対象としているのはMITにおけるソフトウェアではなく、モデルマテリアルとしてOpenMDW内で定義される“モデルアーキテクチャ、パラメータ、関連するデータ及びドキュメントまでを包括的に含んだ概念”が導入されている。また、いかなる制限もなく無償で取り扱う権利として明示的に“著作権、特許権、データベース権、及び営業秘密までを含む”と挙げられており、要するにモデルを中核として一緒に頒布可能な様々のコンポーネントに対して包括的に自由な利用を許諾しているわけである。MITライセンスに近いものの、MITでは著作権以外の権利においては黙示許諾に頼るわけであり、AIという新しい領域において考えられる全ての権利を明示的に許諾することで「著作権を許諾してはいるが、著作権で保護されないアイディア等は許諾していない」という詭弁が罷り通るリスクを封じたということなのだろう。
OpenMDWの特徴
それ以外のライセンスの特徴若しくは条件としては、下記が挙げられる。
- 再頒布時の条件はライセンス条文のコピーと著作権表示若しくは起源表示のみ
MITライセンス等と同様の概念であるが、起源表示まで含まれることに差異がある。ただし、これはAIシステムを構成するコンポーネントの多様性から著作権表示ではない表記が必要な場合はあるからであろう。基本的には頒布するコンポーネントがどこから来たか、誰の手によるものか、を示す全ての記載をNOTICEファイル等に残せば良いということであろう。
- Apache-2.0に枠組みが似た特許条項
簡単に言えばApache-2.0の特許条項に似た枠組みであり、利用者がモデル提供者に対して特許侵害訴訟を起こした場合にその利用者のライセンスを停止する条項であるが、AIコンポーネント向けの細かな変更が幾つか存在する。この点については後述するが、オープンソース性に影響するものではないと現時点で評価する。
- AI生成物の利用にはいかなる制限も義務もなしと明記
一般的にAIの出力には明示的な契約が存在しない限りモデル提供者側の権利が及ばないが、OpenMDWでは出力に対していかなる制限も義務もないと明記している。これは、Meta LlamaやGoogle Gemma等のライセンス契約が出力を経由したライセンスの伝播性を持っていることと対照的であり、利用者には安心材料となる。
- デューデリジェンス責任の明確化
トレーニングデータに含まれる可能性のある第三者の著作権等の権利処理や必要な許諾の取得は全てモデル利用者の責任でデューデリジェンスする旨が明記されている。モデル提供者側のリスクを軽減する現実的な条項とは言えるが、特に権利監査のための工程を持てないような中小規模のモデル利用者にとっては負担となり得る。ただし、条項の有無に関わず何らかの規制法がない限りは原則として利用者側の負担となるわけであり、オープンソース性の判断には影響するものではないと判断できる。
オープンソースへの適合性評価
これまでのライセンスの特徴を整理すると、OpenMDWにはオープンソースの定義に反する内容がライセンス条文に含まれているとは判断できず、やはりOSI承認ライセンスとなるための大きな障害は現時点でないと考えられる。また、MITライセンスやApache-2.0に近い寛容なライセンスであり、モデル、コード、データ、文書といったAI関連コンポーネントに対して包括的に適用できるという手軽さも兼ね備えている。条文の簡便性もあり、AIモデル提供者側にとって扱いやすいライセンスであることは間違いないだろう。
ただし、後述するように幾つかの不明瞭な点やライセンスによって間接的に引き起きる懸念点も考えられ、OpenMDW利用を推奨できる状況は条文の簡便さから比較すると実は少ないのではないかと考えている。オープンソースを追求する多くの組織にとっては、従来の寛容なオープンソースライセンスとクリエイティブ・コモンズ系統のライセンスの組み合わせのほうが適していることが多いだろう。
OpenMDWの不明瞭な点及び懸念点
OpenMDWはAIシステム向けに設計されたAIモデル提供者側にとって扱いやすいライセンスであるが、その一方で従来のプログラムコード向けとは異なる領域も大胆に射程に組み入れたことで、幾つかの議論が生じるだろうと考えられる不確実性が存在し、そこから発生する懸念点も存在する。いずれも深刻な欠陥ではないのだが、変化が激しいAI領域においては今後大きな問題となる可能性は否定できないと考える。
営業秘密までを許諾範囲に含める意味
OpenMDWが明示的に射程としている諸権利には、著作権、特許権、データベース権、及び営業秘密がある。著作権はそもそもオープンソースライセンスで扱う権利の根幹であり、特許権についてはApache-2.0やGPL-3.0等のライセンスで扱っており、もはや特別視されるものではない。また、データベース権についてもクリエイティブ・コモンズ系統のライセンスで実装されており、これもデータベース性を含むコンテンツに対して付与することが一般的になりつつあると言える。しかし、営業秘密に対して明示的な利用許諾を与えるライセンスというものは極めて珍しい。
そもそも、日本、EU、米国といった主要法域においていずれも営業秘密の保護は「非公知(秘密であること)」が絶対的な要件であり、よってOpenMDWのようなライセンスの下で頒布され公知となった情報はもはや営業秘密として法的に保護されない。この根本的に保護されない権利に対してわざわざその権利の利用許諾を付与する意味があるのかどうかという疑問は出てくるだろう。
営業秘密条項に法的な意味がある理由を考えると、少なくともモデルで実現しているアルゴリズム、設計思想、パラメータのチューニング方法といったノウハウやアイディアに対して権利主張することはしないという宣言的な意味合いはあるのだろう。それによって、悪意のあるモデル提供者が将来において「著作権は許諾したが、実装されているアイディアやノウハウの使用までは許諾していない」という詭弁を防ぐ効果はあるのかもしれない。また、営業秘密を列挙することで、まだ未知の権利を含めてあらゆる知的財産権の観点から、制限なく自由に利用できるというライセンスの意図を最大限に強固なものにするという効果もあると考えられる。
ただし、やはりその程度の意味合いでしかなく、モデルの利用者への制限のないモデル利用の許諾を明確化することと引き換えに、あまりライセンスフレームワークに馴染みのない権利をライセンスに入れ込むことによる未知の副作用があるかもしれない。おそらく何の問題もないとは思うものの、営業秘密に関しては著作権よりも各国の法律の定義の差異は大きいわけであり、数年の間はその法的なテスト期間になるのではないだろうか。
適用範囲がより広く、明確かつ強力となった特許報復条項
OpenMDWの特許条項は、Apache-2.0の特許報復条項とよく似ており、基本的な思想や目的は同様と評価できる。ただし、Apache-2.0とは幾つかの点で異なる箇所がある。
If you file, maintain, or voluntarily participate in a lawsuit against any person or entity asserting that the Model Materials directly or indirectly infringe any patent, then all rights and grants made to you hereunder are terminated, unless that lawsuit was in response to a corresponding lawsuit first brought against you.
モデルマテリアルが直接的または間接的に特許を侵害していると主張する個人または団体に対し、あなたが訴訟を提起、継続、または自発的に訴訟に参加した場合、当該訴訟があなたに対して最初に提起された関連訴訟に対するものでない限り、本契約に基づきあなたに付与された全ての権利および許諾は終了します。
Apache-2.0では特許訴訟が提起された場合に特許ライセンスが終了するわけであるが、OpenMDWでは提起だけではなく、“継続、または自発的に訴訟に参加した場合”となっており、これは訴訟を開始した原告だけでなく、後から訴訟へ何らかの加担をする行為も対象になる。また、訴訟の対象範囲はOpenMDW特有の概念であるモデルマテリアルという広い範囲が対象となっており、“直接的または間接的に特許を侵害”という文言から「間接的」な侵害主張も含んでいる。つまり、OpenMDWの特許報復条項はApache-2.0と比較してかなり広い行為と範囲をカバーしており、AIという新しい領域において将来の未知の訴訟形態にも対応しようという意図が伺える。このような範囲の広さは特定の利用者には厳しい条件と映るかもしれないが、モデル提供者を可能な限り保護するということで好ましいことだろう。
なお、特許を直接的に侵害という状況は分かりやすいが、間接的に侵害とは何なのだろうか?これは所要法域の特許法において規定されている間接侵害を指しているのだと推察されるが、日本、米国、EUといった法域でこの間接侵害の要件や思想は幾つかの点で異なる。そのため、この間接侵害の要件の差異がライセンスの解釈に混乱を招くのではないかという懸念が生じる。米国では間接侵害と判断されるが、日本では侵害と見做されないというパターンがありえるという話である。ただ、この間接的という表現は、どの国の法律の下で解釈されてもその国における「直接的ではない侵害」という概念全般をカバーしようという意図と考えられ、法的な不確実性によって利用者からの訴訟行為を強力に抑止することを狙っていると考えられる。
さらに、もう一つ、最も大きなApache-2.0との違いがある。Apache-2.0では訴訟提起によって終了するのは特許ライセンスであるが、OpenMDWでは“全ての権利および許諾”が終了すると規定されている。これは曖昧さがなく、より厳しい報復内容となっているわけである。範囲の広さと合わせ、訴訟を封じるための極めて強力な法的セーフガードであると考えられ、AIコミュニティ内での特許紛争を最大限防ぐという実用的な効果を狙っているのだろう。その反面、特に大企業のモデル利用者側には厳しい条件と映るだろうし、考え得る最大限の範囲を対象にしていることから未知の事案が起きる可能性は否定できない。
モデルのデューデリジェンスを利用者に強いる
オープンソースのライセンスでは、“現状有姿(AS IS)”と“no-liability”から構成される免責条項が一般的であるが、OpenMDWでもほぼMITなどと同様の条項が存在するものの、もう一つ大きな免責の条項が存在する。“モデルマテリアルに含まれる第三者のあらゆる権利のクリア、必要な同意の取得、そしてデューデリジェンスを全て利用者の責任”とする条項が追加されているのである。これは事実上、モデルや一緒に頒布されるトレーニングデータに含まれる第三者の権利、例えば個人の著作権やプライバシーを含む人格権等が含まれているかどうかを利用者側が監査することを義務付けている。
モデル提供者側にとってはこのデューデリジェンス条項はある意味での安心感を与えるかもしれないが、個人情報保護、消費者保護、そして各国でのAI規制法などの強行規定から逃れることはできない。また、モデル利用者側にとっても、非常に大きなデューデリジェンスの負担を課しているようにも取れる。モデル提供者側が傲慢であると世間に受け取られるかもしれないし、利用者側には「全ての権利が許諾されてはずなのに話が違うじゃないか!」という思いも発生するだろう。ということで、余計な混乱を生むだけではないかと考える者もいるかもしれない。
しかしながら、このデューデリジェンス条項は、モデル提供者が持っていない第三者の著作権、人格権等の権利はそもそも利用を許諾することは不可能であるし、各国の強行法規から逃れることはできないという現実を誠実に示したものであるのだろう。結局のところ、出力を含めたAIモデルの利用においては、利用者側が第三者の権利を侵害していないかどうかを監査し続けなければならないわけであり、個人的にはAIモデル向けのライセンスとして好ましい条項だと考える。
データライセンスとしてはクリエイティブコモンズに劣る
OpenMDWライセンスは、単一のモデルの他に関連するソースコード、ドキュメント、メタデータも同一のライセンスで頒布することを実現するが、その同じライセンスで頒布されるコンポーネントにはトレーニング用データセットも含まれる。この仕組みにより、モデル開発に関連したコンポーネントを一括でライセンシングするという簡便さを実現するが、その反面、お世辞でもOpenMDWがトレーニング用データセットにとって適したライセンスであるとは言えない。
OpenMDWの許諾条件はクリエイティブコモンズ系統ではCC-BYに近いと言えるが、データライセンスとしての比較であれば幾つかの点で劣っている。まず、CC-BY 4.0はEUのデータベース権を前提としたデータ特有の権利を明確に処理できるように設計されているが、OpenMDWでは包括的なデータベース概念を許諾しているだけであり、法的に不明瞭であると言える。また、データ自体が特許を侵害するリスクは極めて低いものであり、OpenMDWの強い特許報復条項はデータライセンスとして過剰なものであり、正当な権利を持つ企業などの利用を妨げる可能性があるだろう。
さらに、クリエイティブコモンズはオープンなデータライセンスとして事実上の標準の地位にあり、データの利用、改変、再頒布に関する権利と義務が、世界のデータコミュニティの常識に沿って設計されている。この常識に逆らってまでデータライセンスとして適していないライセンスをデータセットにまで適用する意味はあまりないように考えられる。
クリエイティブコモンズには、CC-BYだけでなく、パブリックドメイン宣言に近いCC0もあるし、CC-BY-SAという派生データセットを作った場合に派生側に同じCC-BY-SAライセンスが伝播するライセンスもあり、用途や目的によって使い分けることが一般的である。そこへOpenMDWという包括的ライセンスを持ち込むのは単にAIトレーニングデータのライセンシングをより複雑な状況に追い込むだけかもしれない。安易にOpenMDWを選択されることで、CC-BY-SAやコピーレフト性のあるライセンスとの矛盾が発生するケースを誘発することにも繋がるのではないかとも危惧する。
オープンウォッシュを助長する可能性
個人的にはこれが最も大きな懸念である。OpenMDWライセンスは「オープンソースの定義」に適合すると個人的には判断しており、OSIへライセンスが提出されればオープンソースとして承認される可能性が高いだろう。しかし、実際にOpenMDWライセンスを採用するモデル開発ベンダーが増えた時、この数年の間に我々のコミュニティを悩ませてきた“オープンウォッシュ”をこのライセンスが助長するかもしれない。
前項でも説明したように、OpenMDWライセンスを特定のモデルへ適用する時、同一リポジトリに置いた関連コンポーネントにもOpenMDWが適用される。つまり、トレーニング用データセットもそれに含めればOpenMDWが適用される。この際、わずかな量、若しくは希少性も重要性も少ないデータセットだけを同一リポジトリに含めてOpenMDWライセンスでリリースし、その状態を「オープンソースAIでリリースした」とも「データセットレベルから真にオープンなモデルである」ともモデルベンダーが宣伝することは可能である。OpenMDWライセンスが「オープンソースの定義」に合致したライセンスであれば、そのような詭弁、つまりオープンウォッシュに信憑性を与えることになる。
OSIが多大な労力をかけて作り上げた「オープンソースAIの定義」では、“実質的に同等のシステムを構築できる程度に十分な詳細な情報”をデータの要件としている。これによって、誰もが同等のモデルを再構築して挙動を確かめたり、どのようなデータでトレーニングされ、どのようなバイアスを持つ可能性があるかを検証したりできるわけであるが、トレーニングデータのごく一部しか公開されていなければこれらの価値は完全に失われることになる。しかし、「オープンソースの定義」に合致したOpenMDWライセンスが一般的に利用されるようになった場合、一部のデータセットだけを公開さえしていれば残りのデータセットは完全秘匿でもオープンソースを名乗れる状況を生み出し、それは数十年に渡ってコミュニティが築き上げてきた「自由」「透明性」「共同作業」「信頼性」といった非常に高い価値を持つオープンソースというブランドを毀損することになるだろう。
Linux FoundationがOpenMDWライセンスをいまだにOSIのオープンソース承認プロセスに申請していない理由はよく分からないが、私はOpenMDWライセンスをよく考えられた優れたライセンスであると現時点で認識している。オープンウォッシュを助長するという理由はオープンソースへの承認を否定する理由にはならないだろう。むしろ、これはOSIを中心としたオープンソースのライセンスコミュニティに対してAI関連のライセンスに関する課題を明確にしてくれたと考えている。
我々は、オープンソースの定義の2条「ソースコード」における「プログラムを改変するために好ましい形式でなければならない」という条項をAIに適用した「AIモデルを研究・改変するために好ましい形式とは、推論コードだけでなく、トレーニングデータやプロセスに関する情報も含まれる」という解釈を広める努力を進めなければならない。それによって、OpenMDWがオープンウォッシュを助長するという見方を減らすことはできるだろう。
総合的な評価
OpenMDWライセンスはMITとApache-2.0の考え方を複雑なAIシステム全体への適用を可能とした寛容なライセンスであり、AIシステム専門のライセンスとして初めてのオープンソースコミュニティが納得できるライセンスであるかもしれない。出力に対して完全に制限がないと宣言していることも非常に好ましい。
ただし、許諾する権利に営業秘密を含む点には様々な法域での意見を聞く必要があるように思うし、データに関してまで特許報復条項の効果が及ぶ点はやや過剰であるようにも感じる。一般的なトレーニングデータの巨大さやライセンスの複雑さを考えても、トレーニングデータはモデルとは別のリポジトリでクリエイティブコモンズ系統等の別のライセンスで頒布するという分離方式がベストプラクティスであり続けると考える。MIT若しくはApache-2.0をモデルに適用し、データセットにはCC系を適用するという方式が今後も続くだろう。
おそらく、一部のトレーニングデータを含めてOpenMDWライセンスを適用することが向いているケースというものは基本的には特殊事例になるのだろう。考えられるのは以下のようなものだと思う。
- 特許等のリスクを伴う科学技術データを含む場合
創薬や遺伝子関連、あるいは半導体設計等のデータそのものに訴訟リスクがある場合は特許紛争の抑止力を提供する包括的な特許報復条項が向いていると言える。
- モデル専用に加工された派生・合成データが存在する場合
データがモデル前処理の副産物であり、他用途だと半端という場合は、モデルと同じライセンスに揃える方が管理しやすく明確である。
- モデルパラメータとデータが相互依存して再現性を成立させる場合
動作検証においてモデル単体では再現できない場合に権利関係を明確にした一括でのライセンシングが分かりやすい。
AIモデル開発に関わりのない自分としてはせいぜいこれぐらいの大雑把なケースしか示せないが、原則としてトレーニングデータを含めてのOpenMDW適用が勧められるのはモデルとデータを不可分にしたい特殊事情がある場合に限られると考えて良いだろう。ただ、それだけでも十分に有用なライセンスであると考えられる。
一部の大企業がOpenMDWを適用したモデルに特に重要ではないデータセットを含ませることで「オープンソースAI」と名乗り出すオープンウォッシュの懸念はあるが、この懸念に立ち向かうのはOSIを中心としたオープンソースのライセンスコミュニティの仕事である。繰り返しとなるが、「AIモデルを研究・改変するために好ましい形式とは、推論コードだけでなく、トレーニングデータやプロセスに関する情報も含まれる」というオープンソースAIと呼ぶための前提を広める努力を我々は継続しなければならない。

OpenMDW License Agreement, version 1.0 (OpenMDW-1.0)
OpenMDW ライセンス契約書、バージョン 1.0 (OpenMDW-1.0) 日本語参考訳
By exercising rights granted to you under this agreement, you accept and agree to its terms.
本契約に基づきあなたに付与される権利を行使することにより、あなたは本契約の条項に同意したものとみなされます。
As used in this agreement, “Model Materials” means the materials provided to you under this agreement, consisting of: (1) one or more machine learning models (including architecture and parameters); and (2) all related artifacts (including associated data, documentation and software) that are provided to you hereunder.
本契約において「モデルマテリアル」とは、本契約に基づきあなたに提供されるマテリアルを指し、(1) 1つ以上の機械学習モデル(アーキテクチャおよびパラメータを含む)、および (2) 本契約に基づきあなたに提供される全ての関連成果物(関連データ、ドキュメント、およびソフトウェアを含む)で構成されます。
Subject to your compliance with this agreement, permission is hereby granted, free of charge, to deal in the Model Materials without restriction, including under all copyright, patent, database, and trade secret rights included or embodied therein.
あなたが本契約を遵守することを条件として、モデルマテリアルに含まれる、またはその中に具現化された全ての著作権、特許権、データベース権、および営業秘密の権利を含め、いかなる制限もなくモデルマテリアルを無償で取り扱う権限をここに許諾します。
If you distribute any portion of the Model Materials, you shall retain in your distribution (1) a copy of this agreement, and (2) all copyright notices and other notices of origin included in the Model Materials that are applicable to your distribution.
あなたがモデルマテリアルの一部を頒布する場合、あなたは頒布物の中に (1) 本契約の写し、および (2) モデルマテリアルに含まれる、あなたの頒布に適用される全ての著作権表示およびその他の起源表示を保持するものとします。
If you file, maintain, or voluntarily participate in a lawsuit against any person or entity asserting that the Model Materials directly or indirectly infringe any patent, then all rights and grants made to you hereunder are terminated, unless that lawsuit was in response to a corresponding lawsuit first brought against you.
モデルマテリアルが直接的または間接的に特許を侵害していると主張する個人または団体に対し、あなたが訴訟を提起、継続、または自発的に訴訟に参加した場合、当該訴訟があなたに対して最初に提起された関連訴訟に対するものでない限り、本契約に基づきあなたに付与された全ての権利および許諾は終了します。
This agreement does not impose any restrictions or obligations with respect to any use, modification, or sharing of any outputs generated by using the Model Materials.
本契約は、モデルマテリアルの使用によって生成された出力の使用、変更、または共有に関して、いかなる制限または義務も課しません。
THE MODEL MATERIALS ARE PROVIDED “AS IS”, WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED TO THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE, TITLE, NONINFRINGEMENT, ACCURACY, OR THE ABSENCE OF LATENT OR OTHER DEFECTS OR ERRORS, WHETHER OR NOT DISCOVERABLE, ALL TO THE GREATEST EXTENT PERMISSIBLE UNDER APPLICABLE LAW.
モデルマテリアルは「現状有姿」で提供され、明示または黙示を問わず、いかなる種類の保証も行われません。これには、商品性、特定目的への適合性、所有権、非侵害、正確性、または発見可能か否かを問わず、潜在的な瑕疵もしくはその他の瑕疵または誤りがないことに対する保証が含まれますが、これらに限定されません。これらの保証は適用法の下で許容される最大限の範囲で保証されます。
YOU ARE SOLELY RESPONSIBLE FOR (1) CLEARING RIGHTS OF OTHER PERSONS THAT MAY APPLY TO THE MODEL MATERIALS OR ANY USE THEREOF, INCLUDING WITHOUT LIMITATION ANY PERSON’S COPYRIGHTS OR OTHER RIGHTS INCLUDED OR EMBODIED IN THE MODEL MATERIALS; (2) OBTAINING ANY NECESSARY CONSENTS, PERMISSIONS OR OTHER RIGHTS REQUIRED FOR ANY USE OF THE MODEL MATERIALS; OR (3) PERFORMING ANY DUE DILIGENCE OR UNDERTAKING ANY OTHER INVESTIGATIONS INTO THE MODEL MATERIALS OR ANYTHING INCORPORATED OR EMBODIED THEREIN.
あなたは、(1) モデルマテリアルまたはその使用に適用される可能性のある他者の権利(モデルマテリアルに含まれる、または具体化されている個人の著作権またはその他の権利を含みますが、これらに限定されません)を処理すること、(2) モデルマテリアルの使用に必要な同意、許可、またはその他の権利を取得すること、または (3) モデルマテリアルまたはそれに組み込まれ、または具体化されているあらゆるものについてデューデリジェンスを実施し、その他の調査を行うことについて、単独で責任を負います。
IN NO EVENT SHALL THE PROVIDERS OF THE MODEL MATERIALS BE LIABLE FOR ANY CLAIM, DAMAGES OR OTHER LIABILITY, WHETHER IN AN ACTION OF CONTRACT, TORT OR OTHERWISE, ARISING FROM, OUT OF OR IN CONNECTION WITH THE MODEL MATERIALS, THE USE THEREOF OR OTHER DEALINGS THEREIN.
いかなる場合においても、モデルマテリアルの提供者は、契約行為、不法行為またはその他の行為のいずれにおいても、モデルマテリアル、その使用、またはその他の取り扱いから生じる、またはそれに関連するいかなる請求、損害、またはその他の責任についても責任を負わないものとします。