ちょっと古いエントリだがMatz氏の日記でGoogle AdWordseで出てくる「若き日本人によるオープンソース企業」を名乗っている企業の話から。この会社は、「オープンソースアーキテクチャを用いたソフトウェア、システム開発実績を有する」ということでオープンソース企業を名乗っているということだが、まあこれは今時はよくあるパターンではある。珍しいことでもないし、悪いことでもない。でも私も何となくひっかかってしまうことは確かである。
そもそも、オープンソース企業と称するには当然オープンソースと何らかの関わりがなければそもそも名乗ることはないわけだが、オープンソース企業という言葉は、
- オープンソースソフトウェアを開発している企業
- オープンソースソフトウェアを利用している企業
この2つの軸で考えることができるのではないだろうか。前者に属するのはMySQLやJBossといった企業が一番分かりやすいが、他にはRedHatも多くのプロジェクトで主導的役割を果たしているし、IBMのようなパトロン戦略の企業も当てはまるだろう。VA LinuxもMySQLやRedHatとは全くモデルが違うわけだが、オープンソースの開発を中心にした企業であることは間違いない。
で、この前者側に属する企業は後者の「利用」も含むことが多いような気がするが、この後者には、GoogleやAmazonといった完全なユーザ企業の他、基本的にはOSS開発に関わらないSIのようなサービスを提供している企業が属するのではないかと思う。つまり、利用することには長けているが、OSS開発には直接関わることがあまりない。というか必要がない。(けど、Googleは結構関わっているなぁ、というのはここではひとまず置いとこう。) 最近ではこのあたりに属する会社がオープンソース企業を名乗ることが多くなっているのではないかと思う。
後者側に属する企業もオープンソースの利用がビジネスに役立っているのなら立派なオープンソース企業と言える。ただ、こう言っておきながら、やはりひっかかってしまう自分もいるのは、前者側のように開発に関わっていなければオープンソース企業と言えないだろ、とも思っているからだろう。まあこれはエゴと言えるかもしれないが、自分としては所属会社がオープンソースソフトウェアの開発企業であることを誇りに思っているので、やはりオープンソース企業という言葉は前者側とどうしても見てしまう。
ここまで書いて思い出したが、MySQL創業者のDavid Axmarkと「Open Source Companyとは何ぞや?」という会話をしたことがある。彼の基準では、MySQLはもちろんそうだし、VA LinuxのこともOpen Source Companyであるらしい。で、幾つかはそうじゃないよねぇとか企業名を挙げたのだが、そこにIBMが入ってたのは驚きだった。特に理由は聞かなかったのだが、おそらく彼はオープンソースソフトウェアをメインビジネスにしていない企業はをOpen Source Companyと称するのは違うだろう、と考えたのではないだろうか。けど、それだけの尺度だと、ただOSSをかき集めて販売しているだけの会社もOpen Source Companyになってしまうわけで、彼に明確な基準があるわけではなさそうだ。
まあ、こんなことを真剣に考えるのは今日はここで止めておこう。OSSを利用している会社もいつかは開発にコミットするかもしれないし、その逆もある。厳密に線をひけるようなものでもなさそうなので考えるだけ疲れてしまう。誇りを持って自分の会社がオープンソース企業だと言えればそれで私は十分だ。